リカーブボウチューニング
中編 スタビライザーセッティング

スタビライザーセッティング

スタビライザーセッティング

スタビライザー(=安定器)は文字通り、弓を安定させるためのものです。トルク(センタースタビの3時⇔9時方向の動き)、ローリング(弓の傾き)、ピッチング(センタースタビの6時⇔12時方向の動き)の3つ方向で、弓を安定(動きにくくする)させることを目的としています。ただ、この中で直接グルーピングに影響を与えるのはトルクだけです。

下記の連続写真がありますが、ユーチューブに動画があるので、それを見たほうがわかりやすいと思います。

https://youtu.be/AFnQJVOjWbM

高速度カメラで撮影したリリースの瞬間のハンドルの挙動です。矢が動き出す直前、赤いラインはプランジャーチップの中央に合わせています。赤いラインを基準にして弓の挙動を見ていきましょう。

基準位置

リリース後矢がレストを半分通過した時点で、弓はプランジャーチップの1/2分アーチャー側に移動しています

羽が通過する時点で、羽に隠れていますが弓は元の位置に戻っています。

羽が通過したあと、弓は前に飛び出します。ここではチップ一個分ですが、この距離はボウストリングの長さに影響されます。

20フレーム、約、0.04秒の間の出来事です。ただし、動画は編集されていて、人間の反応時間、クリッカーが落ちてから、リリース(矢が動き出す)までの時間も入れると、0.1秒強です。

ニュートンの運動の第3法則(作用・反作用)によって、押し手は弓を押しますが、弓も押し手を押し込みます。リリース直後に(A)弓はチップ1/2分押し手を押し込みます。その後に、(A)の時に弓が押し手から受けた力の方向に影響を受けて前方に飛び出します。まっすぐ押せていれば、まっすぐ弓は飛び出します。しかし、まっすぐからずれてしまった時、その影響を低減させるのがスタビライザーです。

一連の写真からわかるように、トルクの影響は矢が飛び出すまでの間でチップ1個分もあります。これリムの力によって強制的に引き起こられる動きであり、重力によって起こるピッチング方向・ローリング方向への動きは始まっていません。そのため矢(グルーピング)に直接の影響を与えるのはその動き(トルク)だけです。スタビライザーのセッティングにおいては、この動きをいかに安定化させるかが課題となる。

スタビライザーのセッティングにおいて、直接的中に影響するのは、グリップのピボットポイントから弓全体の重心までの距離です。この距離が長いほど、トルクの影響を受けにくくなります。原則はこれだけです。しかし、遠ければよいというわけではなく、Aの方向に移動させすぎる(センターを重くしすぎる)と動的ティラーに大きく影響を与え、グルーピングが逆に悪化します。友人からスタビライザーを借りて、アッパーにもロングロッドつけて引いてみれば、どういうことか理解できます。

Bの方向に重心を移動させるためには単純に弓を重くすればよく、理論上何も悪影響はないのですが、保持する体力がなければ、射形を維持できないでしょう。韓国の選手はA方向に重心を持っていくことが多く、アメリカの選手はB方向に重心を持っていくことが多いように感じます。

また、グリップから重心が離れるほど、弓は動きにくくなります。これは安定性を生みます一方、フルドロー時に正しくサイトピンが黄色にないと、サイトピンを黄色につけるのにより力が必要になり、それは射形を悪くする原因となります。

現在のスタビライザーの原型は60年代にホイットが開発したとされています。それより前は、単純に軽いウッドハンドルに安定性を持たせるために、ハンドルの重さを増やす仕組みで、ハンドルに穴をあけて、その中に鉛を入れて使用していた。ホイットはインタビューで、

「あるとき僕は弓にウェイトを入れるという発想がミスだということに気がついたんだ。より伸ばした状態のウェイトがあればもっと良くなると考えた。スタビライジングの原理を説明するために僕が挙げた例は、箒を柄の端で持って、その移動への抵抗の感覚を掴むということだった。そうするととても速く動かすことはできない。でも柄の真ん中で持つと、さっきと比べて驚くほど動きへの抵抗はなくなる。これが単純な物理の法則を用いたスタビライザーの原理の説明だ。」(Traditional Bowyers Encyclopaedia P.188)

1961年、ホイットはこの原理を利用したスタビライザーが搭載された弓を持って、アルカンザスのホットスプリングスでおこなわれたNFAAチャンピオンシップに参加し、会場では「ドアノブ」と馬鹿にされたものの、この弓を使用したロン・スタントンが、新記録を樹立し、スタビライザーは重さだけではなく(1次元)、長さが加わることとなった(2次元)。その後、Vバーが開発されたことで、角度が加わり、現在では3次元セッティングになり、セッティングの多様性は数限りないほどになった。

トルクの問題以外の残りの要素はセッティングによる振動吸収、弓の飛び出し、モーメントの大きさ(スタビライザーの長さと先端の重さ)がテーマとなりますが、原則があるわけではなく、個人の感覚と、使用するアーチャーの体力に合わせるのが大事なので、いろいろと試してみてください。

トップ選手と同じ70m競技がメインなら、最近のトップ選手のセッティングが参考になると思います。ただ、ウェイトは減らしたほうが良いでしょう。ショート・ハーフ(30/50m)がメインなら、1990年代のシングル(1440ラウンド)時代のセッティングのほうが感覚は近いかもしれません。